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大阪高等裁判所 事件番号不詳〔2〕 判決

右朴奇出及び伊藤義一の両名に対する臨時物資需給調整法違反並に所得税法違反坂根正雄に対する臨時物資需給調整法違反各被告事件について京都地方裁判所が昭和二十三年十月十六日言渡した有罪の判決に対し、被告人三名より各適法な控訴申立があつたから、当裁判所は検事某関与して更に審理し次のように判決をする。

主文

被告人朴奇出を判示第一の臨時物資需給調整法違反の所為について、懲役拾月及び罰金拾万円に、判示第二の(一)乃至(四)の所得税法違反の各所為について各罰金参万円合計拾弐万円に、被告人伊藤義一を判示第一の臨時物資需給調整法違反の所為について、懲役八月に、判示第四の(一)乃至(四)の所得税法違反の各所為について、各罰金七千五百円合計参万円に被告人坂根正雄を懲役四月にそれぞれ処する。

本裁判確定の日から被告人伊藤義一に対し五年間被告人坂根正雄に対し三年間それぞれ右懲役刑の執行を猶予する被告人朴奇出及び同伊藤義一が右罰金を完納することができないときは、金弐百五拾円を壱日に換算した期間その被告人を労役場に畄置する。

訴訟費用は全部被告人参名の連帯負担とする。

理由

第一、いづれも所定の衣料品販売業者の登録を受けないのに拘らず被告人朴奇出はフイリツピン人エネレス、ケイソコールと共同出資の下に京都市下京区四条通高倉東入るに衣料品販売本店として「ローヤル」と称する店舖を又同区西条通り富小路東入るに支店として「ほうの木」と称する店舖を設け被告人伊藤義一は被告人朴奇出に雇はれその上席店員として被告人朴奇出を補佐して右両店々員を監督し、両店の仕入及ローヤル店の販売につき責任を負い且つ両店の経理及び記帳の仕事に従事しておるもの被告人坂根正雄は被告人朴奇出に雇はれ前記ほうの木店の責任者であるが、

(一)  被告人朴奇出及び同伊藤義一の両名は共謀の上前記ローヤル店で昭和二十三年四月十五日頃鈴木某から衣料品であるポロシヤツ二打を代金一万八千円で買受けた外昭和二十二年十一月四日頃から昭和二十三年四月十二日頃までの間約四百十回に亘り、湯川伍一外六十二名からシヤツ、靴下、タオル等の衣料品合計五百数十点を代金合計約七百四十七万九千八百円六十銭で讓受け

(二)  被告人朴奇出及び同伊藤義一の両名は共謀の上前記ローヤル店で、昭和二十三年四月一日氏名不詳者にメリヤスキングシヤツ一枚を代金七百五十円で販売した外同年一月二日から同年四月一日頃迄の間約五百回に亘り、氏名不詳者数百名に対し肌着シユミーズ、ワイシヤツ、タオル、靴下等の衣料品合計七百八十点を代金約九十二万五千九百六十二円で販売し

(三)  被告人朴奇出及び同坂根正雄の両名は共謀の上前記ほうの木店で同年四月十五日氏名不詳者に対し婦人用ソツクス七足を代金千四百円で販売した外、同年一月二日以降同年四月十四日頃までの間約五百回にわたり氏名不詳者数百名に対しシヤツ、ワイシヤツ、パジヤマ、タオル、靴下、セイター等の衣料品合計約千二百三十点を代金約九十三万二千四百五十九円で販売し以て衣料品販売の業を行い、

第二、被告人伊藤義一は前記両店舖の使用人に対する給与所得支払者である被告人朴奇出の業務に関し、右支払事務を担当する使用人として給与支払地である前記ローヤル店において

(一)  昭和二十二年十二月末日頃両店舖の使用人合計十二名にその給与所得合計五万五千円を支払うに際し源泉徴収すべき所得税合計一万八千三百二十五円を

(二)  昭和二十三年一月末日頃前記使用人十二名にその給与所得合計四万千六百円を支払うに際し源泉徴収すべき所得税合計一万三千五百二十一円を

(三)  同年二月末日頃前記使用人合計十三名にその給与所得四万四千九百円を支払うに際し源泉徴収すべき所得税合計一万四千二百十円を

(四)  同年三月末日頃前記使用人合計十二名にその給与所得合計四万二千九百円を支払うに際し源泉徴収すべき所得税合計一万三千八百六十五円をそれぞれ徴収しなかつたものである。

右事実は(一)被告人朴奇出の当公廷における私は伊藤義一及び坂根正雄を店の監督者又は販売責仕者としたり又伊藤に私を補佐させ仕入担任者としたり会計乃至店員給与の支払担当者としたことはなく、又右両名と共謀したことはない判示第二の給与所得中伊藤義一に支給した金額毎月二万円のうち八千円が給与で一万二千円は同人に対する貸金であると述べた外判示同旨の供述(二)被告人伊藤義一の当公廷における私は朴奇出に雇はれ昭和二十二年十二月からローヤル店で勤め記帳をやり店員中でも年長者であり店の監督をし主人のおらぬ時に会計をしていた両店で登録をせずに衣料品を販売していた判示第一の(一)及(二)の取引をしたこと及朴奇出が右両店の使用人に給与所得の支払をなす際判示第二記載の如く所得税の源泉徴収をしなかつたことは相違ない旨の供述(三)被告人坂根正雄の当公廷における同被告人の関係部分について判示第一の(三)と同旨の供述(四)被告人朴奇出に対する検事聴取書(記録二百六十八丁以下)中私はリコールと共同出資したが事実上判示両店舖の経営にあたり、商品の仕入れは一切私がやり販売は私が差値することになつている、私の指揮下に販売にあたつていた者は順次替つたが伊藤義一は昭和二十二年六月頃から私の店に勤め洋裁の仕事もしておるが私が買入れた物の記帳販売の記帳店員の監督等も私を手伝つてやつておる、坂根正雄は昭和二十二年十二月雇入れたものでほうの木店で販売の面を受持つておる旨の供述記載(五)被告人伊藤義一に対する検事の聴取書(記録二百三十四丁以下)中私は昭和二十三年一月頃から月給一万五千円交際費五千円合計二万円を貰うようになつた私は判示両店舖の店員中年長者であつた点からその首位に据えられてゐた私の本来の業務は洋裁部の仕立、加工だが年長者の点から主人朴奇出の相談相手となり朴が生地等を購入するについてその価格の相談を受けたり特に私が昭和二十二年十二月一日ローヤル店に替つてからは朴が買入れる生地類その他一切の買入記帳をしていた又その日その日の販売については、店員が売渡伝票と金とを私の所に持つて来るのでこれを計算して朴に渡していた旨の供述記載(六)被告人伊藤義一に対する検事の聴取書(記録三百二丁以下)中私はローヤル店に転勤以来事実上会計の仕事をして居り使用人に対する給与の支払はその都度朴の諒解を得金を出して貰つて各人別に袋に入れわけて全部纏めて私が手渡していた旨の供述記載(七)被告人朴奇出に対する司法警察官の聴取書(記録百三十八丁以下)中店員の伊藤に仕入並に販売の責任を持たすようにしてから、伊藤が台帳を作り記載しているのでそれによると仕入れの数量等がよく判る私はその取引の商談は殆ど仕入係の責任を持たしている伊藤がやつて呉れる私も直接商談して取引しているが販売人の名前は知つているがその住所は知らぬ伊藤が直接商談で買つているから伊藤の買先人を私は知らぬが商品の闇仕入をしたことは事実で仕入の都度仕入帳に記載しているから台帳記載の品は闇仕入れ品に相違ない私の店はほうの木の方が店員四名で坂根は販売の責任者をしている旨の供述記載(八)被告人伊藤義一に対する司法警察官の聴取書(記録百四十八丁以下)中私は昭和二十二年十二月より商品仕入れ担任責任者となつたので、仕入明細帳を作つて明かにすることとなつた台帳には私の仕入れたものも主人が仕入れたものも記帳しているが帳簿によつて仕入の計算をすると、昭和二十二年十一月四日より昭和二十三年四月十五日迄の間湯川伍一外六十三名より四百十回餘りに亘り洋服生地外五百三十点を代金七百四十九万七千八百円六十銭で闇購入したことは事実である私は全商品の仕入総額の三割位が私の商談により闇購入している旨の供述記載(九)原審第二回公判調書(記録四百八十三丁以下)中証人田中治雄の供述として私は下京税務署勤務の直税源泉係であるが、伊藤義一が朴奇出の使用人に対する給与所得の支払担当者として下京税務署に出頭し私と接衞したのであり同人の給与は一ケ月二万円で同人はそのうち五千円は交際費だと申していた私名儀の本件給与支払総額追徴税額訂正顛末書中追徴税額四万四千二百五円とあるは五万九千九百二十一円の誤りであるとの旨の記載(十)被告人伊藤義一提出の始末書添付の買取明細表(記録二十丁以下五十一丁迄)中判示第一の(一)の買入に関する明細の記載(十一)被告人伊藤義一提出の昭和二十三年度纖維製品売上明細表(記録二百四十丁以下二百四十八丁迄)中判示第一の(二)の販売に関する明細の記載(十二)被告人坂根正雄提出の昭和二十三年度纖維製品売上明細表(記録二百五十三丁以下二百六十六丁迄)中判示第一の(三)の販売に関する明細の記載並に(十三)田中治雄作成の源泉徴収訂正報告書(記録四百十七丁以下四百二十丁迄)中判示第二の給与支給額及不徴収税額に関する明細の記載を綜合してこれを認める。

法令を適用すると被告人朴奇出の判示第一の(一)乃至(三)の所為被告人伊藤義一の判示第一の(一)及び(二)の所為被告人坂根正雄の判示第一の(三)の所為は各臨時物資需給調整法第四条第一項第一条第一項昭和二十三年三月三十日法律第十六衣料品配給規則第三条昭和二十二年九月十日商工省告示第五十八号刑法第六十条に該当するが被告人坂根正雄については所定刑中懲役刑を選択し被告人朴奇出及伊藤義一の判示第二の(一)乃至(三)の各所為は昭和二十三年七月七日法律第百七号によりなお効力ある同法による改正前の所得法第六十九条第二項朴奇出についてなお同法第七十二条に該るが被告人朴奇出及同伊藤義一の各判示第一の所為及第二の(一)乃至(四)の所為はいづれも刑法第四十五条前段の併合罪であり朴奇出に対し判示第一の所為について情状により臨時物資調整法第四条第二項により懲役刑及罰金刑を併科し被告人伊藤義一に対し判示第一の所為について所定刑中懲役刑を判示第二の(一)乃至(四)の各所為について所定刑中罰金刑をそれぞれ選択し被告人朴奇出及び同伊藤義一の各判示第二の(一)乃至(四)の所為についてはいずれも所得税法第七十四条を適用した上各罰金を併科し以上各刑期及び金額の範囲内で被告人三名を主文第一項掲記とおり量刑処断し被告人伊藤義一及び同坂根正雄の両名に対しては情状刑の執行を猶予すべき事由ありと認めるから、刑法第二十五条刑事訴訟法第三百五十八条第二項を適用し本裁判確定の日から被告人伊藤義一については五年間被告人坂根正雄については三年間いづれも右懲役刑の執行を猶予することとし、刑法第十八条により被告人朴奇出及同伊藤義一について右各罰金を完納することができないときは、いづれも金二百五拾円を一日に換算した期間その被告人を労役場に畄置し刑事訴訟法第二百三十七条、第二百三十八条により訴訟費用は全部被告人三名に連帯して負担させる。

よつて主文のとおり判決する。

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